品格漂う和の家安曇野市
STORY
落ち着いた“大人”の空間
茶室の露地を思わせる玄関へのアプローチ
桧フローリングの心地よい触感を楽しめる床座式のリビング。
部屋ごとのTPOに応じた、こだわりの素材づかい
落ち着いた大人の空間が味わえる注文住宅だ。やわらかな空気感を演出する素材の使い方
この住まいのコンセプトは「和」。
日本建築の美点を現代に伝える、大事なコンセプトだ。
だから玄関扉は、開き戸ではなく縦格子の引き違い。
玄関に入れば、床フローリングと天井板は、信州が誇る木曽桧。そして桜のさび丸太と白銀の和紙をあしらった洞床(ほらどこ)のような飾り棚が迎えてくれる。
さらには、玄関とリビング、リビングとキッチンの間にも縦格子戸を入れて、和の雰囲気を醸し出す。
リビングの床フローリングは、玄関同様、木曽桧。木目が細かく、さわり心地が実にやわらかい。
これらはいずれも、空間の使い方にあわせ、素材が本来もつ質感を生かした使い方で、実にゆったりとした空気感をもたらしている。
その円熟した味わい。思わずため息が出そうだ。床に座る暮らし
日本建築の特質は生活スタイルにも現れる。すなわち床座の暮らしだ。
この住まいも、畳敷きの和室はもちろん、リビングにも座卓を置き、床座のスタイルを採用している。
そこで大事なのは、床に座ったときの視線の先に、行き止まり感を感じさせないこと。
たとえば床の間に垂れ壁があるのは、床の間の奥に視線を吸い込ませ、無限の広がりを感じさせるためだ。
こうして、室内空間に、実際の面積以上の広がりが生まれる。
この住まいでも、室内にはなるべく壁を設けず、引き戸を開けていれば、何かしら視線が抜けるようになっている。しかも1階全体が階段を中心にぐるぐる回れる回遊式になっているから、家事の効率も上がる。
視覚と暮らしやすさの両面で気配りができてこそ、品格のある住まいは生まれるのだ。部屋として独立したキッチン
昨今の住宅ではすっかりお馴染になった対面式キッチン。
調理から配膳までの動線が最短で済むなど利点はあるが、キッチンの様子がダイニングから丸見えなので、常に片付いていないと、生活感が出すぎてしまうきらいがある。
そこでこの住まいでは、ダイニングを兼ねたリビングと明確に空間を分けている。
しかもキッチンの出入り口には引き戸が設けられ、戸を閉めればリビングからキッチンの様子は見えなくなる。
空間を構成する要素が少ないから、リビングは実にすっきり。
静謐な空間で過ごすひとときは、実に悪くない。アプローチへの気遣い
茶室の庭にある露地は、直線距離であればあっという間かもしれないアプローチをあえて回り道することで、その道のりにストーリー性をもたらす。
この住まいでは、その手法を、玄関までのアプローチを豊かな外部空間にする仕掛けとして用いている。
これにより、玄関までのアプローチがもてなしの一部となり、敷地以上の広がりを感じることができる。
つくり手が日本建築の特質を熟知しているからこそなせる術といえよう。