信州現代民家塩尻市
STORY
信州の豊かな四季を味わう
四季それぞれに違う顔を見せてくれる信州の気候風土を存分に味わうための提案である。
リビングからテラスまで、フラットにつながる「庭屋一如」の空間。
全体を低くおさえ、室内を気持ちよい風が通り抜けるパッシブデザインの思想。
信州の木をふんだんに使った躯体。
まさに、信州で現代生活を送るための「民家」といえよう。日本建築の真髄「庭屋一如」
「家の作りやうは、夏をむねとすべし」を具体化する手がかりとして古くから伝わる「庭屋一如」(ていおくいちにょ)という考え方をご存じだろうか。
庭と屋=すなわち建物の境がなく調和している状況を指し、日本建築の真髄とされている。
季節の特徴がはっきりしている信州の住まいにはピッタリのコンセプトといえよう。
それを取り入れたこの家では、リビングの床を一段下げ南側テラスとフラットにつなげ、床仕上げもテラスと同じ500ミリ角のタイルを貼り、屋内と屋外をつなぐ中間領域の場に。
一方、庭は信州の里山をイメージして雑木を植え、また紅葉落葉樹をシンボルツリーにすることで、季節を感じる手がかりにしている。
日本建築の真髄を受け継ぎながら信州らしさを大事にすることで、類を見ないオリジナリティを獲得しているのだ。低く構える~日本建築の美学
日本建築の慎ましやかな美学を表現するためには「外からは小さく低く、内にはいるほど広く高くすること」が大事だと言われている。つまり、内部空間が豊かでも外部に対しては控えめであればこそ、日本建築独特の品格が得られるのだ。
この家が、その好例である。
建物全体を低くおさえ、室内の天井高も低め。それでいて、リビング上部を吹き抜けにすると同時に、南側のテラスに向けて大きな開口部を設ける。
その伸びやかさ。日本建築ならではの美学が息づいている。構造材と伝統工芸が信州らしさを表現
かつての民家は「地産地消」、すなわち地元産の素材を用いて建てるのが当たり前だった。
この家も、梁に長野県産の唐松を、柱や土台、垂木などに木曽ひのきを使っている。
また、伝統工芸が盛んだった信州らしく、玄関とダイニングの間に、木細工の伝統工芸で製作した麻の葉格子の障子窓をあしらった。
まさしく「信州現代民家」の看板に偽りがないことが、よく分かる。自然の力を借りて室内を快適に
寒暖の差が大きい信州で快適に暮らせるよう、断熱性能を確保しつつ、吹き抜けを介して風がよく通るパッシブデザインのつくりになっているのが、この家の大きな特徴だ。
また、経済性を考え床下送風エアコンを採用し、ダイニングとリビングの段差の部分に設けたルーバーから温風を吹き出している。温風が足元から出る心地よさと、エアコン1台で床全体を暖めることで、その輻射熱が室内全体に行き渡る効果が期待できる。
「現代民家」にとって、時代の強い要請に応える省エネ住宅であることは、必須の条件なのだ。