安曇野市 | 注文住宅 | ふるさとの風景に受け容れられる家 T様邸/家族構成:2人
ご主人のご実家の田んぼに囲まれT邸は建つ。南向きの窓には安曇野の大きな空が映る。
Story
人の営みが積み重ねた伸びやかな景観に
自分たちの新しい家を加える
安曇野の美しさは、一つに水平ラインの調和にあると思います。足元から見上げると、田んぼがあり畦があって、次いで民家の生け垣が、母屋や土蔵の屋根が見えて、屋敷林の向こうに里山が穏やかに広がり、さらに目を高くすると北アルプスが連なっている。それらがなす層のなんと整っていること。
きっとそれは、ここで流れてきた時間の層のたまものでしょう。江戸時代の初めには大規模な堰が開かれ、一大田園地帯となった安曇野では、以来ここで暮らす人の営みの積み重ねがこの景観をつくってきたのです。
Tさんは故郷の安曇野に戻って結婚され、昨年ご実家の隣にわが家を建てました。親しみのある風景画に自分たちの一筆をふるうかのような住まいづくり。夫妻がパートナーに選んだのはサンプロ建築設計です。自然素材がふんだんに用いられ、タイプの異なるデザインのどれもが素敵で、断熱性などの機能面でも優れていることが決め手になりました。
深い軒を備えた傾斜の緩やかな屋根、塗り壁とスギ羽目板を組み合わせた外壁が、とても穏やかな印象です。しかも基本の趣は和に置きつつ、スッキリとした屋根のライン、窓の形や配置などに、現代風に洗練されたデザインの妙を感じます。一つ確かに言えるのは、安曇野がこの家を受け容れたようだということです。
左:周りは安曇野らしい田園風景。淡い色の塗り壁と、明るくも渋みのある羽目板が似つかわしい。/右:西側はご実家に面しているので開口を小さく。玄関扉を開けると北アルプスの景色が広がる。
食卓の脇の窓から
ふるさとの眺めと
流れる時間に親しむ
ご主人の希望で1階の床材には安曇野産赤マツを用いました。リビングは小上がりの畳敷きにして、畳の上でもソファでもくつろげます。こちらは奥様のアイデア。ゴロリ横になると窓の前に広がるのは見慣れたふるさとの風景です。吹き抜けをこのリビングの上だけにしたのは、ダイニングにある薪ストーブの熱を、1階にも2階にも効率よく行き渡らせるためだとか。そして、リビングにもダイニングにも、二人で選んだ地元作家の手によるテーブルを据えました。
バスルームは玄関南側に置き、上から見ると建物全体がL字型をしています。その懐に設けたテラスと庭は、すぐ隣にあるご実家と適度な距離を保つプライベートスペースになりました。しかも、日当たりのいい脱衣室は洗濯室も兼ね、物干しにも好都合だとか。
ダイニングで朝ご飯を食べている時間が好きだと夫妻は口を揃えます。その脇にある縦長の窓からは、二人も農作業を手伝う実家の田んぼが見えていました。水を張り、早苗が伸び、実り頭を垂れ、刈り取られた後に稲孫が伸びる。この家はやっぱり、安曇野の風景や時間と一緒にあるのです。
キッチンとダイニングは自然光が入り過ぎず、照明も抑え気味にして、落ち着いた時間を過ごせるようにした。
左:吹き抜け周りや階段の造形がモダンで洗練されている。キャットウォークはバルコニー代わりにも使える。/右:小上がりの畳リビングは広く、大人数人が横になってものびのびくつろげる。
畳リビングのソファは、クッションに合わせ枠を造作しこの部屋にすっきり収めた。テーブルはダイニングのものと共に夫妻がチョイスした地元作家の作品。
左:2階のファミリースペース。少しこもる感じで、ちょっとした隠れ家のような空間だ。/右:主寝室はこの先の暮らしやすさまで考えて1階に置いた。
無垢の木のぬくもりに、アイアンの手すりやストーブの煙突の黒が瀟洒な印象を添えている。
左:洗面室はバスルームと分けて、寝室に近いトイレの前に。幅も広く使いやすい。/右:玄関へ至る廊下に置く季節の花は、ゲストへのさりげないおもてなし。
T邸の屋根の傾斜は、向こうにそびえる北アルプス常念岳の山容と同調しているかのよう。
Owner’s Voice
Q1家づくりで一番大切にしたことは?
ふるさとの風景と調和する住まいで、和の良さを備えながら、スッキリとスマートに暮らせること。
Q2こうしておいてよかった、
と思ったことは?畳コーナーを小上がりにし、ソファを設えたことで、和の趣を感じながらくつろげるリビングになった。
Q3このビルダーさんに頼んで
よかったことは?お願いしたことをしっかり実現してくれるところ。いろんなタイプのデザインができるところ。
Plan & Data
- 敷地面積
- 386.64㎡(116.73坪)
- 延床面積
- 130.64㎡(39.44坪)
- 1F面積
- 84.60㎡(25.54坪)
- 2F面積
- 46.04㎡(13.90坪)
- 設計者のこだわり
- 安曇野のロケーションに相応しく、その風土に溶け込む和モダンな民家。この家の見どころを3つに絞るなら、「常念岳を借景にする東側からの外観」「地元安曇野産赤マツのフローリング」「小上がりの畳リビング」だと思います。また「家族の想いをマキシマムに表現すること」にこだわりました。
著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.34より転載しています。
こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。