佐久市/注文住宅/住まい手が愛する英国家具を主人公に建築士の設計力光る家 佐久市/K邸 家族構成/夫、妻
山を連想させる三角屋根に色や素材でモダンさを表現した外観が、信州の景観にマッチ。塗り壁とタイル張りを使い分けることで、統一した色味の中にメリハリと立体感を演出した。シンボルツリーとして、春には白い花の咲くエゴノキ、秋には紅葉するマルバノキを植えた
Story
英国ヴィンテージ家具と造作家具を組み合わせた暮らしの舞台
インテリアから紐解く
意匠性と機能性を両立した家
素材の質感を活かしたシンプルな空間に、存在感ある調度品がセンス良く収まるK邸。家づくりの原点は、ダイニングにある英国ヴィンテージのチェストだ。「建築士の森川さんに最初に伝えたのが、『このチェストを素敵に見せたい』でした。すると家具の世界観に基づいたプランを出していただいて。豊かな風合いを活かすための空間演出はもちろん、機能性も抜群の提案に驚きました」とご夫妻は振り返る。
そうして始まった森川さんとの打ち合わせ。「印象的だったのは、私たちの『こうしたい』を踏まえたうえで、今だけでなく“これからの暮らし”を見据えた提案が常に加えられたこと。打ち合わせは毎回心踊る時間でした」と奥さまは話す。それは例えば、長く健康で暮らすための高性能なつくり、家具とともに経年変化を楽しんでいける自然素材の内装など。自分たちの「好き」を見極めたご夫妻が信頼できる建築士と創り上げた、唯一無二の住まいだ。
左/リビング南側の窓からは、信州らしい田園風景が望める。昼間は明るさと眺望を楽しめ、夜はカーテンと間接照明が生み出す揺らめく光がリラックスした雰囲気をつくりだす
右/白を基調にゴールドと淡いグレーでコーディネートされたキッチンは、まるで洋書を見ているよう。写真右手には、キッチンからも玄関からも入れるパントリーがあり、買い物帰りの動線も抜群
建築士がとことん追求した
本当の居心地の良さ
森川さんのモットーは、綿密なヒアリングで施主像に寄り添うこと。今回最もこだわったのは、徹底した“居心地の良さ”だ。「間取りや周辺環境、お隣のご両親との距離感、時間帯や日常のシーンなど、さまざまな角度からアプローチしています」と森川さん。さらに一年を通じて快適な室内環境も重視。自然の力を活用するパッシブデザインと高い気密・断熱性能、さらに全館空調システムも導入し、温熱環境の“居心地の良さ”も叶えた。
ご夫妻のお気に入りは、リビングのカーテン越しに届く柔らかな灯りのもとで過ごす夜のひと時。「そんな時、『居心地が良いってこういうことか』と気づきます。ここに暮らして初めて、真の心地良さを実感したかも」とご主人。奥さまも「私の好きなアジアンテイストの素材も随所に取り入れていただけて、本当に心落ち着く住まいができました」と笑顔に。どんな時も、どんな場所でも“居心地の良さ”がふたりを包む、安らぎの住まいが完成した。
冬の日射取得を考慮した吹き抜け、夏の日射遮蔽に配慮した空間設計など、パッシブデザインが随所に。TVボードの右下には、同社オリジナル仕様での全館空調を行う床下エアコンを収めた。吹き抜けは2階ホールとつながっている
階段下を活用し、リビングの一角に設けたヌック。インテリア雑貨をディスプレイしたり、来客時のベンチとして使ったり。「子どもが生まれたら、おもちゃ置き場になるのかな」
パッシブデザインと高性能で叶える
穏やかで心やすらぐ住まい
明るい光が降り注ぐ開放的なLDK。壁に採用した珪藻土壁紙は光の反射が少なく、目にやさしい柔らかさ。オークの無垢床との相性も抜群
左/キッチン背面はかすれたような味わいのあるタイル張り。3種のサイズを組み合わせ、表情豊かな仕上がり
右/クラシカルな味わいのイギリス・ショーズ社のダブルボウルをキッチンシンクに。水栓はアメリカ・コーラー社製を採用、一つひとつが吟味されたお気に入り
住まいの随所を彩る、結婚式で使った思い出のグッズたち。華やかカラーのキャンドルは、ゲスト卓をほのかに照らした
生活スタイルを考慮して寝室は1階に。窓は朝日の入る位置に設けた。「ブラインドを透かして、朝の光が壁に映る瞬間が大好き」と奥さま
左/玄関ホール脇にあり、スムーズな手洗い動線を叶えた洗面スペース。メラミンカウンター、ワイドな鏡、アラベスク柄のタイルなど、細部まで抜かりなくお洒落
右/ダイニングテーブルはキッチン作業台から離してレイアウト。「横並びだと合理的かもしれませんが、あえて分けることで空間を切り替えました。食事がゆっくり楽しめます」
左/L字型の玄関土間は奥行を演出でき、使い勝手も◎
右/南側外観。前面が田畑なので気持ちよく視界が広がり、外からの視線も気にならない
左/LDKと続く寝室内には、お洒落なセレクトショップのようなドレッシングルームを完備。「Kさんの世界観を収納に至るまで再現。銀座の某セレクトショップのフィッティングルームをヒントにしました」と森川さん
右/家族の声が届く吹き抜け越しの2階ホールは、書棚を備えてスタディスペースに。「全館空調システムのおかげで、家中どこにいても快適です」
“暮らしを楽しむ3つのヒント”
◆POINT 01
お気に入りのヴィンテージ家具が主役
ご夫妻が見初めたヴィンテージのチェストから家づくりがスタート。「英国の歴史あるものが大好き。チャーミングですよね」。ここだけ色を変えた珪藻土の塗り壁や下がり天井など、チェストが主役の輝きを放つ“見せ場”は森川さんの提案から。ダイニングテーブルも英国ヴィンテージで統一
◆POINT 02
間接照明×カーテンが生む癒し効果
「落ち着いた灯り具合のリビングにしたくて、ダウンライトはあまり設置していません。夜を過ごす灯りは、もっぱらドレープとレースのカーテンレールの間に設けた間接照明。カーテンの布地を通した柔らかな光に、とても癒されます」
◆POINT 03
トイレは「魅せる」空間に徹底
「ウィリアムモリスのデザインも大好きで、トイレの壁紙に選びました。腰壁と真鍮のライトをあしらった空間は、我が家ながらほれぼれするほど。トイレなのにドアを開けたままにして、いつでも眺められるようにしています(笑)。2階のトイレは色違いでコーディネートしました」
家の顔とも言える玄関ポーチは広く取り、シンプルな中に上質感を演出。玄関アプローチに敷いたのは、経年変化を楽しめるベルギー産の石・オールドポルフィリー
左/キッチン収納は扉付きで、隠したいものサッとしまえる。背面壁にはアクセントクロスをあしらい、細部までK邸の世界観を表現
右/家族の声が届く吹き抜け越しの2階ホールは、書棚を備えてスタディスペースに。「全館空調システムのおかげで、家中どこにいても快適です」
ランドリールームは洗濯物がカラッと乾くよう、西日が入る窓配置に。寝室の朝日活用など、太陽の動きを考えた採光計画も秀逸
吹き抜けから見たリビング。2階の個室にいても、ドアを開けておけば気配が伝わる
もともと素敵なアイテムをたくさん持っていたKさんご夫妻。それらを見た森川さんが、飾って楽しめるプランを提案した
Builder' Eye
建築士
森川真樹- 好きなもの、暮らしぶり、どういった人生を歩んできたか、将来の夢…などなど、とことんヒアリングしてお施主さまの人物像に迫り、想いに寄り添うことを一番大切にしています。Kさんは好みが明確で、お手持ちの家具や雑貨を活かしたいというご希望からスタート。こちらも楽しんでご提案させていただきました。
Housing Data
- 家族構成
- 夫、妻
- 施主
- 30代・会社員
- 竣工
- 2022年5月
- 構造・工法
- 木造軸組工法
- 工期
- 7カ月
著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「ナガノの家PREMIUM2023」より転載しています。
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