信州古民家再生 × CHIC AMERICAN松本市 リノベ―ション
STORY
やさしさに包まれた家
アメリカのしゃれたコテージのようでありながら、実は住まいの記憶を受け継いだ外観のシルエット。
新旧の素材が併存し、なおかつ現代の暮らしにマッチしたインテリア。
世代を越えてやさしいバリアフリー。
どこまでもやさしさに包まれたリノベーション住宅だ。家族全員が集うLDK
この住まいは築50年以上という大屋根の家に大人4人と子ども1人が住むためのリノベーション。
生活リズムの違うものどうしがお互いに気にせず住めるよう、中央の玄関から階段までのびる廊下を中心に、それぞれの世帯を振り分けた間取りになっている。
それでも、同じ屋根の下に住むのだから、一同が集まれる場所がほしい。
そこでメインのLDKは吹き抜けの開放感と薪ストーブの暖かさ、トップライトの明るさで、みんなが集まれる場所になっている。
吹き抜けにすることで以前は隠れていた梁が現れ、囲炉裏でいぶされて黒々とした姿は、歴史を感じさせてくれる。
住まいの歴史がそのまま家族の歴史と重なる、シンボリックな場所なのだ。既存の構造材を素材として生かす
今回の工事は、内装、外装、断熱、構造の全てに関わるフルリノベーション。
ただしメインの躯体はそのままだから、住まいのシルエットは変わらず、室内も、先述のLDKのように既存の木材と新たな素材が同居している。
こうした姿にこそ、リノベーションの醍醐味はある。
既存の構造材を素材として生かすことで、古いだけでも新しいだけでもない、全く違う空間が生まれるのだ。
かつての記憶を受け継ぎつつ、新たな物語を生み出してくれることだろう。優しさあふれるバリアフリー
古い家の悩みどころは、暑さ寒さや明るさだけではない。段差も大きな問題なのだ。
とにかく、かつての日本家屋はとにかくあちこち段差だらけだった。
玄関の敷居、座敷と廊下の間など、細かな段差が、シニア層にとっては文字通り“バリア”となる。
そこでこの住まいは、水回りを中心に段差をなくしバリアフリー化を図っている。
こうした優しい配慮が、生まれ変わった住まいの寿命をさらに延ばしてくれる。省エネで選んだ薪ストーブ
今後、住宅の省エネ化がますます求められる中で、再生可能エネルギーを用いる薪ストーブに注目が集まっている。
一台あれば家中を暖める上に料理もでき、炎を見つめる一時がレクリエーションにもなるのだから、初期投資以上の価値があることは間違いない。冬の寒さが厳しい信州では、なおさら効果的だ。
ここで選ばれた薪ストーブは、ダッチウェスト・ フェデラルコンベクションヒーターのラージサイズ。
触媒の働きで煙を二次燃焼してくれるから熱効率が高く煙もクリーン。しかも小石のようなエンボス加工により表面積が4割アップし、放熱量も多い。
もちろん、室内全体も、空気と熱の流れを考え抜いている。
冬場は、床・壁・天井をすっぽり包み込んだ断熱材が熱を外部に逃がさず、夏場は、大きな吹き抜けから暖気を2階に上げ、外に排出すると共に、メインキッチンの東側に取り付けたすべり出し窓が、南北方向に吹く心地よい自然風を受け止め、室内に取り込む。
こうした工夫が、夏冬を問わず室内を快適にしてくれる。
自然の力を上手に生かした、信州ならではのパッシブ住宅なのだ。