みんなが集える家 K様邸/家族構成:3人
Story
オークの床が素足に気持ちいいリビング。木材の他にも自然素材をふんだんに使った室内は、その色調も含め身体にも目にも心にも優しい。
その風土に溶け込んでいく信州のための民家
Kさん夫妻はご主人が名古屋、奥様が横浜出身で、信州にIターンしてきた。ご主人が信州大学で学んだことがご縁だ。
学生時代を過ごした環境のよさに、「いつか戻ってきたい。田舎暮らしがしたい」と考えていたという。
その家は、周囲の田園風景によく似合う。大きくはないが端正で、その面影に自然や人を柔らかく受け入れる優しさがにじみ出ている。家が風景に馴染むと、住む人とその土地との仲もきっとよくなる。そう思えてくる。
リビングや寝室からは、西側に安曇野風景のシンボル常念岳を望む。リビングを南向きにして日差しをたくさん取り込むことも大事だが、それよりもこの土地らしい景観を取り入れることを優先した。
それでも吹き抜けやキッチンに設けた窓から十分な光が注ぎ、日中は自然光だけで過ごせるし、朝日も明るくて気持ちがいい。強すぎる西日は、テラスの上の深い軒でほどよくさえぎり、そのテラスから入った風は、2階へと流れて自然な換気を促す。実に理に適ったつくりだ。
左:建物全体の高さを抑え、屋根の傾斜も緩やかだから、安曇野のおおらかな田園風景によく似合う。庭でつながる左手の平屋は、奥様のご両親が別荘代わりに利用する家。/ 右:大きく機能的な玄関ポーチの軒。郵便受けを取り付けた壁は、隣地からの視線をさえぎる役割も果たす。
左:家全体に一体感があるシンプルなゾーニング。風や暖気の流れもいい。/ 右:玄関ホールはなく、靴脱ぎから直接リビングに上がる。なるべくLDKを広くするための工夫。
左:キッチン周りには適所に収納を設け、パソコン作業などができるカウンターも備えた。娘さんもここで勉強ができそう。/ 右:大きな格子の障子やスタイリッシュな薪ストーブがモダンなテイストを添えて、和に寄り過ぎずしかも落ち着いた空間となった。薪ストーブ下の大谷石は、薪の出し入れも考えて広めに敷いた。
サンプロ建築設計は昨年「信州現代民家」をプロデュースした。信州の風土に適し、その穏やかな風景に馴染み、人の暮らしに寄り添って、日々の安らぎと調和をもたらしてくれる信州の家の新しいかたち。そのコンセプトをK邸でも引き継いでいる。そのうえで、夫妻は「みんなが集える家」を目指した。
家の大きさでなく、空間づくりでそれを遂げているのがこの家の見どころだ。LDKをなるべく広くとるため、玄関ホールを端折り、靴を脱いだらすぐリビングに上がれる。階段は幅広にし、しかもいちばん下の段は踏み板を大きくしてベンチがわりに腰掛けられる。ご主人が望んだように、お子さんと常に一緒にいられる場所ができたし、お客様が大勢みえても大丈夫だろう。
もともと片付け上手な奥様のアイデアで、適材適所にきっちり収納を設けた。キッチン、勝手口付きのパントリー、洗面が連なり、階段を挟んでぐるりと回れる動線は、シンプルにしてかつ機能的。デキる主婦の目線が生きると、家はムダが削がれ、その分くつろぎの空間も増す。
安曇野の風と光と風景をうまく取り入れたK邸は、これから時が経つほど、その風土に溶け込んでいくことだろう。
収納上手な奥様のアイデアが生きているキッチン。いちばん生活感の出る場所がサッパリ収まると家全体の居心地もよくなる。
左:洗面台にはお金をかけずシステムのものをすっきりと収めた。対して左手の棚は造作した。既製品のカゴが格好よく納まる。/ 右:吹き抜けの天井の勾配は、風の流れをつくり、自然な換気を促す。薪ストーブの熱も家全体を巡る。
左:簡素だからこそLDKとの一体感もあって使い勝手もいい和室。/ 右:キッチン後ろの横長の窓や、吹き抜けに設けた南西の窓からもしっかり日差しが入り、障子越しの柔らかな光と相まって、日中は自然光だけで過ごせる。
Owner’s Voice
ダイニングキッチンは子供もお気に入りの場所です
Q1家づくりで一番大切にしたことは?
家族が自然に集い一緒に過ごす時間。特に子どもと常にいてあげられるLDKづくり。
Q2こうしておいてよかった、と思ったことは?
階段を挟んでぐるりと回れる動線。効率的な収納スペースの配置。子どもも一緒にいたがるダイニングキッチン。
Q3このビルダーさんに頼んでよかったことは?
すっきりと洗練された空間をつくってくれたこと。
Plan & Data
- 敷地面積
- 313.94㎡(94.96坪)
- 延床面積
- 118.64㎡(35.89坪)
- 1F面積
- 74.73㎡(22.60坪)
- 2F面積
- 43.91㎡(13.28坪)
- 設計者のこだわり
- 南側に常念岳を望むロケーションを生かし、隣地親世帯の平屋と庭でつなぐ西向き配置の計画としました。深い軒を設けたテラスから階段を抜け2階に風が流れるパッシブデザインを取り入れ、どこにいても家族の気配が感じられる空間作り、ゾーニングにしました。
著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.25より転載しています。
こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。