既存と調和する家松本市
STORY
和モダンスタイルの住まい
日本建築のシルエットとモダンデザイン。
坪庭やテラスなど、屋外を室内同様に楽しむ仕掛け。
現代の暮らしを満足させる居住性能。
これぞ和モダンのお手本といえる注文住宅だ。周囲と融和する和モダンの外観
かつて当たり前に存在した日本家屋。
近年は珍しくなったが、敷地周辺では所々に散見し、落ち着いたまちの風景を構成している。
敷地内にも、木の柱梁を現した真壁(しんかべ)づくりの建物や立派な土蔵が残っており、それら既存の風景と調和しつつ、現代の暮らしにマッチした住まいをつくることが前提であったことは間違いない。
その意味で、この佇まいは、満点回答ではないだろうか。
屋根と外壁は現代的な素材を用いて耐久性を確保しつつ、屋根の形と杉板の軒裏で、見事に日本家屋のシルエットをつくり出し、周囲との調和はもちろん、敷地全体の品格を高めることにも成功している。
信州の現代の住まいを追究し続ける地域工務店なればこその「技」なのだ。機能から決められた屋根形状
この住まいの屋根は、2階建て部分の切妻屋根と、平屋部分の片流れ屋根で構成されている。
それらは単に日本的なシルエットをつくるためだけにデザインされたのではない。
太陽熱温水器を取り付けるのに南側を向いた傾斜が必要だったのと、1階寝室では深い軒下空間を希望されていたことから自然に導き出されたものだ。
元はといえば日本家屋の屋根も、気候風土に合わせた雨対策や日差し対策から決められたもの。
その軌跡をたどった、まさしく現代の日本の屋根だ。メンテナンスが簡単なタイルテラス
この敷地の魅力は、なんといっても建物をぐるりと囲む庭。豊かな自然が四季折々の姿で楽しませてくれる。
北庭はパブリックな庭、南庭は家族だけのプライベートな庭と、領域もきっちり分けられている。
プライベートな庭は多目的に使えるだけに、土でもウッドデッキでもない場所が欲しい。
そこでダイニングの南側に設けたのがタイルテラス。
バーベキューなど外での調理が楽しめるだけでなく、畑仕事から帰っての一休みや、土を落とすにも便利だ。
耐久性もあり、土汚れは水で流せば済むので、メンテナンスがとても楽。
ウッドデッキとはひと味違った使い勝手の良さが、実に魅力的だ。記憶を受け継ぐ和室の意匠
この住まいは、大きく二つのボリュームに分かれている。
南側の平屋部分が親世帯エリア。間に玄関をはさんで、北側1階が共通のLDKおよび水回り、北側2階が子世帯エリアである。
南側の親世帯エリアを構成するのは、7畳半の寝室と、6畳半の和室。
和室は客間、そして仏間として使われる。
床の間は現代的なデザインの洞床だが、絞り丸太の床柱と、地窓に取り付けた木彫の窓飾りは、旧家屋の床柱と欄間を再利用したもの。亡きお父様が大事にされた旧家屋の思い出がつまった意匠なのだ。
住まいづくりを通して、暮らしを受け継ぎ、記憶をも引き継ごうとする工務店の姿勢は、必ずや住まい手に伝わり、将来、何代にもわたって愛され続けることだろう。