季節を愛でる家松本市
STORY
低く慎ましくおさえた屋根のシルエット
通りからは平屋と見間違えるほど低くおさえた屋根。
これは、かつての日本建築が備えていた美徳であり、どれだけ室内が豊かだとしても、決して周囲に誇示したり威圧感を与えたりはしないものなのだ。
日々の暮らしに美を求める「民藝運動」が活発だった松本だからこそ、こうした住宅が生まれたのであろう。タテヨコに伸びやかなコの字形の間取り
建物は、敷地の西南に設けた庭を囲むようなコの字形の構成。
敷地の東側で南北に伸びた軸線上にキッチンやバス・トイレなどの水回りを置き、そこから西側に二本の“腕”を伸ばして各居室を配置している。
室内は、LDKも個室も実にゆったり。
リビング・ダイニングと、その西側にある和室は、建具を引き込めば、伸びやかな一室空間に。
また、リビングの上部が吹き抜けになり2階まで続くので、タテヨコに伸びやかな空間なのだ。庭を通して季節の移ろいを楽しむ
住まいの“中心”は西南に位置する庭。
玄関は庭側にあるし、どの場所からも庭向きの窓が開く。
特に北側のLDKと和室は、南側に長い縁側を設け、四季折々の庭の様子を楽しむことができる。
縁側の上部はしっかり軒が出ているから、雨も気にならない。
本来、自然を楽しむことに長けた日本建築は、室内と外部の中間領域に本質があると言われる。
住まいの内と外が隔絶されず、つながっているからこそ、室内でも季節の移ろいを感じることができるのだ。
とすれば、この住まいも、まぎれもなく日本建築の本質をつかんでいるといえよう。
現代の注文住宅が、古き良き伝統を受け継いでいることが、実に喜ばしい。自然の力で快適に
寒暖の差が大きい松本市だけに、夏と冬の備えは重要だ。
といっても、エアコンに頼りきりでは味気ない。
気密・断熱はもちろん、夏の日射遮蔽と冬の日射取り入れ、そして風通し。
これらの性能を高めることで、電気に頼らず快適な住環境を得る手法を、パッシブデザインという。
この住まいではその手法を取り入れ、季節の移ろいを楽しむ暮らしを、性能面からもバックアップしている。
さらには、エアコンの暖気を床下に送り、窓際の吹き出し口から送ることで暖房効率をアップ。
太陽光発電も取り入れ、省エネ化を図っている。
日本の伝統的なライフスタイルを、地域の気候風土に合わせ、現代の技術でより快適に。