敷地条件を最大限生かした 明るさと眺望が広がる家松本市
STORY
黒板のような深い色が決め手の外観
家とは、未来を描くための自分たちへのプレゼントだ。
こうありたいと願う意志を包み込むためのベースであり、キャンバス。
その点から言うと、この家は家族の想いを描き出すにふさわしい外観を持っている。
立体的な構成は、黒板のように深いグリーンがベースカラー。
チョークのようなウォームホワイトがアクセントに配色され、杉の羽目板との調和も美しい。
少し離れた場所から眺めると、植栽となじむ落ち着いたカラーバランスが印象に残る。
象徴しているのは、家族みんなが「それぞれの夢や理想を大切にしていく」というやさしい気持ち。
唯一無二の世界観を持つこの家で、チョークアートのように自由なマインドを描いていく。
敷地のかたちに逆らわない、素直で緻密なプランニング
縦に細長い敷地の制約を逆手に取り、開放感とプライベート感の両方を兼ね備えた間取りを実現。
‟そうせざるをえなかった”ように見せかけて、‟実はそれこそがベスト”な解答となっているプランニングだ。
たとえば、玄関、キッチン、ダイニング、リビングは一直線上に配置。
これはもちろん縦長の敷地だからなのだが、自然に家の奥へと視線が注がれるため、建坪面積以上の開放感を感じることができるのだ。
加えて家のかたちをL字にしたことで、子どもたちが駆け回ることができる庭が出現。
土の匂いやグリーンを楽しめるウッドデッキはこの庭を囲むように設置し、自然な円を描いている。
これにより、子どもたちが遊びながら成長する姿を、ご夫婦ふたりがいろいろな角度から見守ることが可能に。
ここに住まう家族4人の関係性を現しているかのような丸いかたちは、縦四角の家にやさしさをプラスしている。
アイランドキッチンやパントリー。家事効率アップの回遊動線
直線上に空間が連なる非常に使いやすい間取りだが、そのシンプルさがゆえに、建築士の細かな配慮が欠かせない。
キッチンはアイランドタイプを採用し、ダイニングエリアと結合させて‟島”をイメージ。
あちらからもこちらからもキッチンに入ることができる回遊動線が、家族全員の動きをスムーズにしている。
また、キッチン横のパントリーはシューズクロークとつながっており、つまりその先の玄関とも直結。買い物から帰ってきて右手に上がればパントリーへ。まっすぐ入れば居住エリアへとつながるかたちだ。
シューズクロークとパントリーとの間に廊下とつながる扉を設けたことで、ここでもぐるぐると回遊性ある移動が可能に。もちろんパントリーを通過せずにシューズクロークも利用できるので、子どもたちの使いやすさも抜群。
ぐるりと円を描く動線をたくさん取り入れて、移動がしやすく、家事がしやすい家となった。
子どもを見守りながら家事もできる オープンな間取り
「子どもを見守る家にしたい」と奥様。
「妻がよければすべてよし」とご主人。
そんなご夫婦の願いをかたちにするため、キッチンに立ったときに見える範囲をとにかく広げたこの家。
リビングでテレビに熱中している背中や、畳コーナーでからだをいっぱいに動かして遊ぶ様子。
ダイニングでごはんを食べる笑顔と、カウンターデスクで宿題をする真剣なまなざし。
そんなすべてのシーンにおける子どもたちを見守ることができるつくりになっている。
お母さん、と子どもが呼びかければ、なあに?とすぐに応えることができるオープンな間取り。
「お母さん、この問題はどういうこと?」
「お父さん、これおいしいね!」
お互いを思いやる人となりがにじみ出ているご夫婦にぴったりな、家族の距離が近づく家である。
やわらかく清潔な印象のインテリア
活発にアウトドアなどを楽しむというよりは、のんびりとおだやかに日々を慈しんでいるご夫婦。
そんなお二人のたたずまいを映し出すかのように、インテリアもナチュラルで落ち着いたものに。
床材に使ったシックなカラーのパイン無垢材が部屋の印象を支え、木目の美しい吊り棚や造作家具と、白い壁やキッチンが調和。
空間に映えるアイアンブラックや、ドアやクロスで取り入れたブルーをアクセントに、やわらかく清潔で、居心地のいいスペースができあがった。東西の二方向から光が注がれる空間
この家における一番奥のスペースにあるのが、リビング。
上部は開放的で明るい吹抜けになっているのだが、これもまた縦長の家の恩恵として、
東西二方向の高窓から光が注がれる設計となっているのが特徴だ。
休日には、あたたかな日差しがぽっかりと注ぐなか、家族一緒にくつろぐのもいいだろう。
映画を見たり、本を読んだり、庭の木々をながめたり。
こどもたちと永遠に続くかと思われるじゃんけんをして遊ぶのもこの場所だ。
そのうちすぐ隣のキッチンからは夕飯のいい匂いが漂ってきて、おもちゃを一緒に片付けて、ダイニングの席に着く。
いただきます。この言葉をこれから何度一緒に言うのかな。
そんなことを思いながら、この家で、また明日の暮らしを描いていくのだ。